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Tobias Dantzig『数は科学の言葉』

数は科学の言葉 (ちくま学芸文庫)

数は科学の言葉 (ちくま学芸文庫)

もしすべての事柄に神の摂理を見て取るとしたら、神は数学者としてはたいしたことがないと認めるしかないだろう.10進法には、生理学的な利点のほかにほとんど魅力はないからだ.

ピタゴラス学派の哲学から宗教的神秘主義を取り去ると、そこには、人間は宇宙の性質を数と形を通じてしか理解できないという基本的考え方が込められていることが分かる.

宇宙のハーモニーはレガートというたった一つの形式しか持たないが、数のシンフォニーはその対極にあるスタッカートしか奏でない. この不一致を解消しようという試みはいずれも、スタッカートを速くすると我々にはレガートのように聞こえるかもしれないという希望的観測に基づいている.

教訓:虚構は解釈を探す一つのやり方である.

宗教は科学の母である.その子供は成長して母のもとを去ったが、哲学は年老いた母の面倒を見るために家に残った.その長い同居生活は、母親よりもその娘のほうにより大きな苦労をかけた.

すべては現実の名のもとに!
確かにこれは思い切った計画である.しかしその改造が終われば、粛正の後に残ったわずかな数学は現実と完璧に調和するはずだ.
“はたしてそうだろうか?”

数学はいわば最高裁判所であって、それ以上控訴することはできないのだ.