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原研哉『デザインのデザイン』

デザインのデザイン

デザインのデザイン

本書を読んでデザインというものが少し分からなくなったとしても、それは以前よりもデザインに対する認識が後退したわけではない。それはデザインの世界の奥行きに一歩深く入り込んだ証拠なのである。

僕らが気づくべきことは、モダニズムはまだ終わっていないという事実である。その誕生当初の衝撃力は失っても、モダニズムは流行やモードにとって代わられる存在ではない。

新奇なものをつくり出すだけが創造性ではない。見慣れたものを未知なるものとして再発見できる感性も同じく創造性である。

僕は電子メディアが嫌いではないし、電子メールがないともはや困惑するほどに、既に情報技術とは深い関係を結んでしまった。だからこそ、紙メディアを用いる場合には、無意識にではなく、はっきりとした意志を持ってこれと向き合いたいと思うのである。電子メディアの台頭のおかげで、紙はようやく本来の魅力的な素材としてふるまうことができるようになったのだ。

「これいい」ではなく「これいい」という程度の満足感をユーザーに与えること。「が」ではなく「で」なのだ。しかしながら「で」にもレベルがある。無印良品の場合はこの「で」のレベルをできるだけ高い水準に掲げることが目標である。

「マンホールの蓋がなぜ丸いか。丸くないと蓋が穴の中に落ちてしまうから」というのは数学の問題ではなく、デザインの問題である。