Vladimir Sorokin『青い脂』
- 作者: ウラジーミルソローキン,Vladimir Sorokin,望月哲男,松下隆志
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2016/04/06
- メディア: 文庫
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個体は七体。トルストイ4号、チェーホフ3号、ナボコフ7号、パステルナーク1号、ドストエフスキー2号、アフマートワ2号、プラトーノフ3号。
やつらは探している。お互いを探している。(目が見えないのか?)とうとう見つける。全員の(アフマートワ2号を除く)ₒ|ₒ が勃起する。ナボコフはプラトーノフを突き刺し、プラトーノフはチェーホフを、チェーホフはパステルナークを、パステルナークはドストエフスキーを、ドストエフスキーはトルストイを突き刺し、トルストイは泣き喚きながらアフマートワを突き刺す。彼女はLポジットな高笑いを上げ、ディス=アクティブにきいきい喚きながら、自分の濡れた貝殻を開き、氷山の青白い肌の上に放尿する。そして彼女の尿は青脂を洗い流す。まるでそれはただの氷みたいだ。
どうだ? Lハーモニー八十八パーセント。
また眠る!
ソーニャソーニャソーニャ槌を戸棚からからから片づけろ。
ソーニャ、槌を戸棚から片づけろ。
槌よソーニャから戸棚を片づけろ。
今日、彼が泳ぐパートは読点だった。すなわち『平等の書』からの長い、第一級の複雑さを有する引用文《ОДНИМ ИЗ ВАЖНЕЙШИХ ВОПРОСОВ СОВРЕМЕННОГО ЦЕЛЕВОГО СТРОИТЕЛЬСТВА БОРО ЯВЛЯЛСЯ, ЯВЛЯЕТСЯ ИБУДЕТ ЯВЛЯТЬСЯ ВОПРОС СВОЕВРЕМЕННОГО УСИЛЕНИЯ КОНТРАСТА》における唯一の読点として泳ぐのである。
「お主のイチモツは勃っておるか?」
「勃っております、偉大なる父よ」
「見せなさい、童子」
フルシチョフの力強い舌がスターリンの亀頭の上で螺旋を描きはじめた。
「いいかい……君……ぼくは……いや……ちくしょう……でも、いや……先っぽ! 先っぽ! 先っぽ!」
彼女はしゃがみ込み、彼の性器をじっと見つめた。彼女の美しく幼い顔に失望の影が走った。
「ちがう」彼女は立ち上がった。「これはキイチゴじゃない」