Reinaldo Arenas『夜明け前のセレスティーノ』
- 作者: レイナルドアレナス,Reinald Arenas,安藤哲行
- 出版社/メーカー: 国書刊行会
- 発売日: 2002/04
- メディア: 単行本
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かあさん、ぼくをだますの、これが最初じゃないよ。頭から井戸に飛び込むって毎日言うけど、全然。絶対、そんなことしない。ぼくを家から井戸へ、井戸から家へ死に物狂いで走らせられると思ってる。だめだよ。もううんざりしてるんだ。いやなら飛び込まなくていい。でも飛び込まないなら飛び込むなんて言わないで。
ついにぼくは一匹見つける。棒でなぐりつけ、ふたつにする。でも生きてて、片方は駆けだし、もう片方はぼくの前で跳ねはじめる。とんま、そんなに簡単に殺せるなんて思うなよ、と言ってるみたいに。
「人でなし!」とぼくのかあちゃんは言い、ぼくの頭に石をぶつける。「かわいそうに、トカゲたちはそっとしておくの!」。ぼくの頭はふたつに割れ、片方は駆けだした。もう片方はぼくのかあちゃんの前にいる。踊ってる。踊ってる。踊ってる。
そして夜が明けかかっている。また夜明け。
「顔が水びたしだ」
「泣いてるもの」
斧しか見えないし斧の音しか聞こえない。壁に斧が貼られ、屋根や柱、棟木からぶらさがる斧でいっぱいの、この斧の家では。床が、通路が、樋が斧でできてる。そしてじいちゃんが斧を乗せるためのテーブルを作ったときに使った杭さえ斧でいっぱい。
アチャス。 アチャス。 アチャス。 アチャス。 アチャス。 アチャス。 アチャス。 アチャス。 アチャス。 アチャス。 アチャス。 アチャス。 アチャス。 アチャス。 アチャス。 アチャス。 アチャス。 アチャス。 アチャス。 アチャス。 アチャス。 アチャス。 アチャス。 アチャス。 アチャス。 アチャス。 アチャス。 アチャス。 アチャス。 アチャス。 アチャス。 アチャス……
降誕祭!……
––ぼくのじいちゃん